フランス式の出産

 

日本やアメリカでは自然への回帰・個性的なお産への期待が高まり、
会陰切開ナシ・自宅出産・アクティブバースetc、さまざまなスタイルのお産がありますが、
フランスではお産に個性やイベント性を求めていない気がします。

とにかく、子供が健康に生まれればそれでよし!
産後はとっとと自宅に戻り、日常生活に帰る!
という感じ。

親と子の自立も進んでいる個人主義的お国柄ゆえか、
里帰り分娩もなく、産後もまめに親が手伝いに来るということもあまりないです。
それどころか、退院後すぐにパーティーに母子ともども出席したり、
ただちににもとの生活に戻って楽しく過ごそうとします。

ここでは、ワタクシが体験や感想・友人たちの体験談から聞きかじったことetcを元に、
フランスでの、出産の実際を、まとめてみます。

☆体験談がベース故、すべてのケースに当てはまるわけではありません。何てったって、フランスでの話ですし(笑)。
詳しいことは、最寄りの病院/懇意の医療スタッフを、質問攻めにすることを、おすすめします。

いざ出産って時の、フランス公立病院での流れ。

分娩に至るまでの、陣痛の起こり方、医師からの指示は、状況によりけりで、人それぞれいろんな物語がありますが、簡単に言えば、こんな感じで、その日!は進んでいきます。

陣痛・破水・その他→受診→分娩決定→そのまま分娩室へ→麻酔→子宮口全開まで待機(導尿・人口破水その他必要処置)→分娩・会陰切開→胎盤排出→会陰縫合→初乳の授乳→2時間分娩室で待機→病棟・入院室へ

・・・・・・誕生→出てきたらそのまま、とりあえず数分母の胸の上に乗せ抱かせてくれる→各種計測→風呂?→服を着る→初乳の授乳→母とともに2時間分娩室にて待機(保温のため保育器に入れられる)→病棟の新生児室へ

いつ医者に行くか?

出産のサインは、フランスも日本も同じです(当たり前か(笑))。
以下の3つの兆候を目印に、入院準備を整えて、連絡を入れてから病院へ向かいましょう。
産科は夜間診療入り口がありますので、あらかじめ確認しておくとよいでしょう。

@陣痛;
30秒〜1分程度続くお腹の痛みが、10分間隔程度(1時間に6回以上)で定期的に感じるようになったら、病院へ行ってもいいころあいです。
早めに行っても、陣痛の強さ・間隔が十分でなかったり、子宮口の開き具合がよくなければ、帰宅させられることもあり。
普通は、この間隔で陣痛がきてから、さらに10時間以上は生まれるまでに間があると言われます。
ですが、経産婦の場合は、急激にお産が進むこともありますので、自分の感覚も侮らずに、大体陣痛が15分間隔になってきたら、病院へかかってください。
陣痛がしっかりつくのを待っている間に、入院準備の最終チェックや、軽い食事・シャワーをしたり、ゆったりとすごすとよいでしょう。
(急激に異常な痛みを、腹部全体または一部にあるなど、おかしいと思ったら、医者に連絡を。)

陣痛の痛みと、普段のお腹の張りの違いがわかるのか?と心配になりますが、「定期的に来る」これがキーポイント。
臨月にしばしば感じる、いわば陣痛の予行演習とも言える前駆陣痛は、間隔が不規則で、突然起こったり、長時間休止したり。1分以上続くことがあっても、腰痛を伴わなかったり。
陣痛かどうか、悩むくらい余裕のある痛みなら、まだまだ、生まれません!本物の痛みは、疑いの余地なし!ですから〜♪
絶対に、本当の陣痛との違いがわかるはずなので、あんまり気にしないことです。

A破水;
赤ちゃんを包んでいる卵膜が、お産の進行により破れ、中の羊水が出てくること。
普通は、ある程度流れたら止まるものなので、ご安心を。
けれども、赤ちゃんのいる卵膜内と外部が、破れ目を通して接している状態なので、ばい菌が入る可能性があります。
すぐに病院へ行きましょう。
入浴も禁止です。

Bおしるし:
少量〜中程度の出血+粘液、これは俗に「おしるし」と呼ばれるおりものもので、赤ちゃんを包んでいる卵膜が、子宮壁からはがれるためにおこります。
これを認めると、少なくとも、数時間〜5日程度以内に、お産が始まることが多いのです。
そんくらいの、軽い意味です、おしるしって。そのまま、心安らかに、時を待ちましょう。
(量が多い、長時間続くなど、出血の仕方がおかしいと思ったら、医者に連絡してみてください。)

お産の進行の仕方は、本当に人それぞれです。
一般に多いのが、
数日前に「おしるし」→陣痛→破水
と進むらしいですが、そんなにお上品にマニュアルどうりに行かないのが、お産です。
順番どうりじゃない!育児本どうりじゃない!とパニックにならず、おっとりと構えてください。
破水が先だって、おしるしがなくたって、陣痛が弱くたって、たいてい問題ありません。子供はちゃんと生まれます。
それに、ドラマのように「うっ、うまれるぅ〜」なんて、突然出てくることは、まず、ありません。
自分の感覚も侮ることなく、心配だったら、すぐにお医者様に相談して、お子ちゃまが「出るぞ!いざ!!」の状態になるのを、待ってやりましょう。
フランスだって、日本だって、変わりないです。大丈夫、大丈夫。

分娩予定日・計画出産

分娩予定日の持つ意味は、前記したとうりです。
繰り返しますが、その日に産まれるという意味ではないので、変に気にしないことです。
ただ、フランスで留意しておかなければならないのは、「フランスでの予定日=妊娠期間のリミット」ということ。その日が過ぎると人工的にお産が始まるよう、処置(陣痛促進剤の使用など)をする場合もあります。

計画出産も、多く行われています。
月齢も子供の成長も十分で、陣痛はないが子宮口がかなりやわらかくなっていて、いつでも出産OK!になった時点で、週末や、好みの日に出産日を調整するのです。
こちらは、里帰り分娩や、親の呼び寄せをしないで、夫婦だけで産後の生活をスタートさせるので、 付き添ってくれるパートナーの仕事の予定に合わせたり、在仏日本人なら日本からの助っ人の来仏予定に合わせたり、医師が手薄になるバカンス時期を避けること、も可能です。 もちろん、純粋に、医学的な意味で、適応になることもあります。
日本では、陣痛促進剤を使う計画分娩を、あまり好ましくないモノとしてとらえる風潮もあるようです。けれども、薬剤の調整などは医者に任せる分野で、説明を聞いて良く理解した上で、納得できれば、もう心配せずに任せちゃいましょう。自分たちにとっての利点・短所などをよく考えて、決めることです。

そういえば、私の場合、10分間隔で陣痛がきていて、子宮口が3cm程度に開いている状態なのに、何度も「今日、産むのですね?」と聞かれたなぁ。
イヤだ!といったら、先延ばしにしてくれたのかな (笑)?「イヤだ!」と言って先延ばしにするのも、計画出産に含まれるのかな(笑)?

受診・分娩室へ

お産の兆候があって受診すれば、 通常の診察以外に、陣痛を確認するため、陣痛計測器にかけられ、確実にお産が始まりつつあることを判断されたあと、そのまま分娩室へ送られます。
日本なら、陣痛室なんかに入るところですが、基本的に無痛分娩が一般的なフランスでは、分娩室へ行って麻酔を受け、そのまま出産まで同じ部屋で過ごします。
そのため分娩台はすごしやすいように、人工革張りのベット状になっているものの、いざ娩出!というときになって、下半分だけもぎ取って足乗せ台を取り付け、分娩に備えることができるという、高機能な モノになっています。

麻酔

これは、こちらで初めて出産する人が、かなり気になる部分でしょう。
フランスの無痛分娩は、硬膜外麻酔といって、背中から背骨に細いチューブを入れることで、下半身だけを麻痺させるという方法です。赤ちゃんに麻酔はかかりませんし、妊婦が意識を失うこともありません。
フランスでは、意思表示をしなければ無痛分娩OK!と思われてしまうほど、メジャーな分娩形態で、全体の60%とも90%とも言われる赤ちゃんが、この方法で生まれてきています。
そんな状態で、普通分娩に病院側も慣れていないせいか、普通分娩を希望しても、何かといっては「麻酔したら〜」と悪魔のように耳元でささやかれ、痛さとどさくさにまぎれて、最後には無痛分娩に踏み切る羽目になった!という、トホホな話も聞きます。
その賛否は、皆さんの判断にお任せして、無痛分娩(硬膜外麻酔)の仕組み・実際、長所とリスクとあげてみます。

長所
・母子ともに、産後に体力を温存できる。
・やたらと痛みに耐えなくてよく、かつ、意識もあるのでBEBE誕生の感動にゆったり浸れる。
・筋肉に無駄な緊張がかからないので、普通お産が早くすむ。
・胎児に対する仮死などの頻度は麻酔を受けないときと変わりない。(赤ちゃんには麻酔はかかりません)

リスク
・合併症の可能性。(アレルギー・ショックなど。そこまでいかなくても、一時的な頭痛・足の痺れなども)
・いきみにくくなるので、吸引分娩を必要とする率が高い。
・陣痛が弱くなることが多いので、陣痛促進剤を併用する。
・麻酔以降、各種観察が必要となるため、全身チューブ&モニターまみれになり、動きがとれなくなる。

こういった、医学的・肉体的な長所・短所とは別に、陣痛という一種神聖な苦痛を乗り越えないで、安楽な無痛分娩を選ぶことで、産まれた子への愛情も薄れるのではないか?と言う、不安を抱かれる方もいらっしゃるかもしれません。
だけど、子供への愛情って、そんなことに左右されるようなモンでしょうか?
特に、海外生活というプレッシャーを抱えた状態では、出産以上に苦労することだって、あります。無痛分娩の子供だからドウコウ…なんて、考えている暇なんて、全然ありません(笑)。苦労すればいいってモンじゃぁ、苦痛に耐えればいいってモンじゃぁ、ないと思います。
今、自分たちにとって、何が一番必要か?大切なことか?よく考えて選び取った方法なら、その時点での最良の決定となるでしょう。後悔する時は、どんな方法をとっていても、後悔するモンです。そんな先のことを考えすぎずに、そのとき 一生懸命悩んで決定を下した自分たちに、自信を持って下さい!
そのためにも、医療スタッフに質問したり、自分で情報を集めて勉強したり、自分で決定を下せる賢い妊婦を目指して下さいね。

麻酔前の診察
・産科医から麻酔希望の意志を確認されたあと、出産する病院で麻酔医の診察を受けます。これは、妊娠中のいずれかの時点で、医師から指示されます。
前出の一般的な問診に加えて、過去の麻酔歴・その時の状態・麻酔に関するアレルギーの有無や、麻酔する部分である背骨の健康状態などを、問診・診察・確認されます。
・状況によっては、精密検査を要求されることも。私の場合、きつい近視+コンタクトもずれるくらいの乱視なのに、何年も目医者にかかっていないことが問題視され、眼科診断を受けさせられました。出産のために息むと、眼圧が昂進して、失明する危険もあるらしい。私の場合全然問題なかったのですが(^^)。

麻酔Q&A(笑)
@いつ麻酔をするのか
フランスでは、分娩に挑んで以降、妊婦の希望時に、麻酔をしてくれます。
ぎりぎりまで麻酔を使わず我慢したいのなら、それも可能です。その日の気分で決めて下さい。
普通は、一番長くて苦しい陣痛開始から子宮口全開までの間にしてもらうことになります。

Aどこで麻酔をするのか
入室した分娩室です。
ここで、麻酔から出産・産後の状況観察のための2時間等、トータル10時間近くを、過ごすことになります。

B誰が行うのか
麻酔科の医師です。
日本で無痛分娩が普及しない理由は、麻酔科の医師の不足も、一つの原因と言われていますが、フランスには、必ず産科に麻酔科の医師がいます。
いくつもの分娩室を掛け持っているので、忙しそうですが、何回も様子を見に来て声をかけてくれます。
ちょっとでも、疑問がある、調子がおかしい、等と感じたら、すぐに尋ねてみましょう。

C実際の手順
陣痛の合間を見て麻酔をかけます。
座れるようなら、ベットの端に背中をやや丸める感じで腰をかけ、その反対側からDrが処置をします。10分とかからない処置です。

背中の広範囲に及ぶ部分を消毒→2〜4回ほど施術部分周囲への部分麻酔(普通の小さい注射です)→背中から腰椎(腰骨)への太めの注射…針を抜くと、チューブが残る仕組みになっているので、これは1回しか刺しません→それに麻酔薬を満たした長いチューブをつなぐ→穿刺部とチューブにべったりと大きなテープを貼り付けてカバーし、作業終了♪

麻酔後10分ほどは、麻酔医が、付き添って、問題がないか、しっかり見てくれます。
「これで、普通なの?」と思うようなことがあったら、率直に聞いてみると良いですよ。

D麻酔をかけたら、どんな状態になるの?
・各種モニターにまみれるので、動けません。思いだせるだけでも、背中には麻酔チューブ+腕には点滴(しかも輸液と陣痛促進剤etcに枝分かれしている)+自動血圧計+お腹には陣痛計測器+さらに児心計…あぁ、えらいこっちゃ。
なので、寝返りも、医療スタッフに手伝ってもらって動きます。ずっと仰向けで転がっている+陣痛の名残で、腰がしびれてきます。
・食事・飲み物摂取も不可。口が渇くので、ミネラルウォータースプレーで口をしめらせる程度は、許されます。点滴しているため、あまり空腹感は覚えません。
・トイレは、時間を見て一時的・継続的導尿(尿道にチューブを入れて、人工的に尿を出させる)をしてくれます。
・感覚は、腰から下が、麻痺します(当たり前)!
んが、意識は清明で、もちろん下半身以外は、普段と同様に動かせます。
麻痺している下半身も、思いっきり力を入れれば動かせますが、麻痺した足を無理矢理動かしてみるというのは、なかなか妙な足ゴタエです(笑)。
人によって違いますが、足先が冷たい感じがしたり、暖かく感じたりします。しびれる時は医者に声をかけて下さい。
・以上のような状態ですが、子宮口が全開(10cm大)するまで、数時間の間、非常に、暇〜です。たまに医療スタッフが来て、ごそごそ仕事をしたり声をかけていってくれるだけで、こっちはすることがない!昼寝するなり、読書するなり、何か暇つぶしグッズをもっていくと、重宝するでしょう。

E痛みは?
・麻酔をかけるには、背中への注射で部分麻酔をしてからの作業になるので、その時は注射程度には、痛みます。
・確かに、麻酔の効き具合というのは、人それぞれ違うらしく、全く痛みが消失する人(例えばワタクシ)から、麻酔をかけてもかなり陣痛が痛いと感じた人まで、様々なようです。
・陣痛は、圧迫感・しびれ感、といった感じで定期的にくるのが、何となくわかります。
・内診・触診などは、痛くはないけれど、「触られてるなぁ〜」と触覚だけで感じます。

F息むことは出来るの?
・出来ます。ただし、意識のない部分を動かすのは、至難の業!でも、みんな何とか息みますので、頑張りましょう。
息み方は、後ほど!

麻酔のあと(何も付随する問題がない、一般的な例)
@胎盤娩出後、会陰の創(会陰切開参照)を縫合したあと、麻酔は切ります。背中のチューブは抜きません。麻酔の影響は通常2〜3時間で切れると言われています。
Aその後2時間はそのまま分娩室で安静にします。
B病室にあがったら、持続的導尿は抜かれます。次回、尿意を感じたら、ナースコールして、看護婦さんの付き添いの元、トイレへ行くことになります。
C産後の各種痛みがひどい場合は、背中のチューブから、一時的に鎮痛剤を注入してもらえることもある。普通程度の痛み(会陰切開痛や子宮収縮痛etc)なら、母乳育児に差し支えのない経口鎮痛剤を内服するように、指示されます。

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